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班のメンバーが全員オムライスを作り終えたあとは、試食タイム。
温め直したコンソメスープをひとつずつスープカップに注いていると、新海くんがわたしに近付いてきた。
「それ、運ぶよ」
「ありがとう」
わたしからスープカップを受け取ると、新海くんがテーブルに並べていく。
オムライスを作ったあとから、班の中で過ごす新海くんの表情はずいぶんと和やかだ。
最初は野田くんや他の女子メンバーに話しかけられて戸惑っていた新海くんだけど、調理実習の後半で野田くんに絡まれまくっているうちに、だいぶ耐性ができたらしい。
スープカップを持ってわたしとテーブルのあいだを行ったり来たりする新海くんのことを眺めていると、最後のカップを運び終わった新海くんが戻ってきて首を傾げた。
「どうかした?」
新海くんにじっと見つめられて、心臓がドキッとする。
「ううん、別に。ありがとう、手伝ってくれて」
慌ててぶんっと首を横に振ると、新海くんが優しく目を細めた。



