初恋ランチタイム


 あまり好意的でない空気のなか、新海くんは綺麗に卵をふたつ割ると、フライパンを火にかけて、慣れた手つきで卵をかき混ぜた。

 オムライスも家で作り慣れているのか、新海くんの作業工程には少しの迷いもなくて。

 フライパンに流した卵を綺麗に焼くと、あっという間にチキンライスが包まれていく。

 その過程はまるで魔法みたいで。

 ぽかんと口を開けて見ている間に、つやつやした黄色い卵に包まれた見栄え100点のオムライスがひとつ、わたしたちの目の前にできあがっていた。

「え。新海くん、すご……」

 テーブルから下がって見ていた同じ班の野田くんが、わたしの斜め後ろから急に身を乗り出してくる。

「これ、もはや店で出てくるやつじゃん。新海くん、おれの番のときに代わりに作ってよ」

 さっきまで新海くんのことを敬遠していたくせに、野田くんが笑いながら急に調子の良いことを言う。

「え、おれ……?」

 野田くんに話しかけられた新海くんは、たぶん本気で戸惑っていて。眉尻を下げたなんだか頼りなさげな困り顔に、班のメンバーの空気が変わった。