「いや、変わったっていうのはそういう意味じゃ……」
慌てて否定するわたしに、新海くんがゆるりと首を横に振る。
「いいよ。クラスのみんながおれのこと、『学校始まって以来の不良だ』ってウワサしてるのも、おれのことを怖がって避けてるのも知ってる。中庭で弁当食ってるのも、昼休みにおれが教室にいるとみんなが居心地悪そうにしてるからだし」
「そうだったの?」
「うん。まあ、そもほも、こんな髪色で入学式になんて出たおれが悪いんだけど」
新海くんがそう言いながら、色の明るい前髪を指でつまむ。
「その髪の色って、染めてるんだよね?」
「うん。染めてるっていうか、染められたが正しいかな」
「染められた?」
「そう。おれの十個くらい年上の従姉が美容師やってて、入学式の前にカットモデル頼まれたんだ。無料で切ってもらえるしラッキーって思ったら、ハイライトの練習したいからって言われて……。実験台にされた」
「ハイライト?」
「あー、うん。このところどころに茶色く入ってるやつ。これをどのくらいの太さで入れるのがいい感じになるか試したかったらしい」
新海くんが、自分の頭を指差す。
言われてみれば、新海くんの金髪には、ところどころに茶色いラインが入っている。



