初恋ランチタイム


 テーブルに置いてあった塩コショウの瓶を手に取ってボウルに加えて、卵を溶くための菜箸を探す。

 だけど、用意し忘れていたのか、テーブルの上に見当たらなかった。

 菜箸やお玉などの調理器具は、ほとんどが調理用テーブルの側面の引き出しにしまってある。

 自分の手前の引き出しを開けたり閉めたりして菜箸を探しまわっていると、テーブルの向こう側にいた誰かが、わたしの前にそれをすっと差し出してきた。

「あ! ありがとう」

 助かった……。

 顔をあげてにこっと笑いかけた瞬間、助けてくれたのが新海くんだとわかってドキッとする。

 さっきまで窓の外を見て、こっちに見向きもしなかったのに。困っていることに気付いて助けてくれたことが、すごく嬉しかった。

 だけど、「中庭以外では話しかけないで」って言ってたのに。

 お弁当だって、もう一緒に食べないって言ってたくせに。

 わたしが昨日の夜送ったラインのメッセージだって無視したくせに。

 こんなふうに関わるのはいいの——?

 いろんな感情が胸に湧き上がってきて。ドキドキして。

 差し出された菜箸を受け取る手が小さく震える。