初恋ランチタイム


「それじゃあ、今から順番にフライパンで卵を焼いてチキンライスを包んで行ってもらいます。最初は中村さん、お願いします」

「え、わたし?」

「そう。ひとりずつ出席番号順で見ていくから、事前に説明したとおりにやってみてくれる?」

 伊藤先生からの一番指名を受けて焦る。

「え、今からですか?」

「もちろん。出来栄えだけじゃなくて、卵の割り方とか焼き方とか、作っている工程全体をみるから、あんまり緊張せずにやってね」

 伊藤先生が優しい口調でそう言って、にこりと微笑む。

 緊張せずにって言われても……。

 一番目なんて、うまくいくかな。

 誰か目の前で見本を……、というか、新海くんが作るところを見てから挑戦したかったな。

 助けを求めるように、窓際に座っている新海くんにちらっと視線を向ける。

 でも、新海くんはわたしにも伊藤先生の話にも興味がないみたいで。そっぽ向いていた。