わたしは何も言ってないのに。新海くんへの気持ちがレンアイ感情だってことまで見抜いていたなんて。
友人の恐ろしいほどの勘の良さに、驚きすぎて言葉が出ない。
お玉をもつ手をぐるぐる回して動揺を隠そうとしていると、ふいにカノンがわたしの手を止めた。
「ニコちゃん、お鍋混ぜすぎ。それ以上混ぜたら、スープが跳ねちゃうよ」
視線を落とすと、鍋の中で琥珀色のスープが大きく波打っている。
指摘してくるカノンの声も、わたしを見つめるカノンの瞳もとても冷静。
だけど、新海くんへの気持ちがカノンにバレて、私の心は鍋のスープに負けないくらいに大きく波打っていた。
わたしが新海くんのことを好きかもって言ったら、カノンはどういう反応をするんだろう。
「新海くんには関わらないほうがいい」って、わたしの気持ちに釘を刺してくるのかな。
波打つスープを見つめながら考えていると、ほかの班のテーブルを見ていた家庭科の伊藤先生がわたしたちの班のテーブルに移動してきた。
「そろそろごはんが炊けそうなので、次は四班を見ていきます」
その言葉で、わたしにじっと注がれていたカノンの視線がそれる。
よかった。
だけど、ほっとしたのは一瞬だけ。



