それでも、もしかしたら……。

 と、今日の調理実習に賭けていたのだけど。

 やっぱり、新海くんはもうわたしとの関りを断ちたいらしい。

 お玉を握った手をくるくると動かしながらぼんやりと新海くんの金髪の後ろ姿を見つめていると、近付いてきたカノンがコンロの火を止めた。

「ニコちゃん、もういいんじゃない?」

「ああ、うん。ありがとう」

「なんか、ぼーっとしてたね」

「そ、そうかな……」

「うん。ニコちゃん、実習始まってからずっと新海くんのこと気にしてるでしょ」

 カノンが声のトーンを落として、わたしの隣でぼそりとつぶやく。

 まさか、無自覚に新海くんのほうを向いてしまう視線にまで気付かれていたとは思わなくて。カノンの勘の鋭さに驚かされる。

 どきまぎしながら、鍋のスープを無駄にくるくるとかき回していたら、カノンが琥珀色のスープを見つめながら「ニコちゃんてさあ」と話し出す。