家庭科の調理実習が始まって、そろそろ二十分。
エプロンを持ってきてカタチだけは授業に参加しているものの、新海くんは調理が始まっても班の活動に加わろうとはせずに少し離れたところでひとりで座っていた。
「新海くんにもなにか仕事を頼まない?」
この実習でカノンや他のみんなの誤解を解きたいと思っているわたしは、そんなふうに働きかけたけど。
新海くんのことを怖い人だと思っている班のメンバーたちは、わたしの提案にあまりいい顔をしなかった。
「なにもしてもらわなくてもいいんじゃない? 新海くんも調理実習なんてやりたくないでしょ」
カノンや他の班のメンバーがそんなふうに言うのを聞いて、わたしはすごく残念に思った。
チキンライスに入れる鶏肉や野菜のみじん切りなんて、料理の得意な新海くんに任せたらきっとあっという間なのに。
不器用な音をたてながら玉ねぎをふたつみじん切りにすると、同じように細かく切った鶏肉やピーマンと一緒に、お米の入った炊飯器に投入する。
そこにケチャップやコンソメなどの調味料を足すと、炊飯器のフタをしてスイッチを入れる。