「ほんとうに全部、新海くんの手作り? 卵焼きも、きんぴらごぼうも、ハンバーグも? お弁当箱におかずを詰めたのも?」
「ああ、うん……。グラタンは冷凍食品だけど」
「それはわかるよ」
「そっか。このグラタン、幼稚園の妹が好きで、入れてくれってよく頼まれんの。うち、二年前に母親亡くしててさ、父さんと家事分担してるんだ。夕飯の準備と弁当作りは主におれの担当」
新海くんがそう言って、にこっと明るく笑う。
その笑顔を見たら、いったいどこの誰が新海くんのことを『学校始まって以来の不良』だなんていう噂を流したのか疑問が湧いてきた。
だって新海くん、めちゃくちゃ話しやすいし。ふつうに、すごくいい子だ。
「新海くんが料理得意なんて、ちょっと意外」
「得意ってほどでもないよ。母親がいなくなって、必要に迫られて始めたって感じだし。妹がいなかったら、弁当作りなんてやってたかどうかもわからない」
「だとしても、すごいよ。初めて話したのにこんなこと言うのはおかしいかもしれないけど……、わたしの中で新海くんのイメージがかなり変わった」
「やっぱり、ニコちゃんもおれのこと不良だって思ってた?」
誉め言葉のつもりで言ったのに、新海くんが眉根を寄せて苦笑いするから少し焦った。



