「そりゃ、頑張るよ。新海くんに食べてもらうつもりだったんだから」
ドキドキしながらそう言うと、新海くんが一瞬驚いたように目を見開いた。それから眉尻を下げて、少し複雑そうな顔で笑う。
「ごめんね。お弁当交換の約束やぶって。おれ、これまでニコちゃんが一緒に昼休みを過ごしてくれてすごく嬉しかったよ。毎週火曜日と金曜日が楽しみだったし、最近はニコちゃんの美味しそうに食べる顔を思い浮かべながらお弁当に何のおかず詰めようかって考えてた」
「え……」
「このまま誰にもバレずに、ずっとニコちゃんと中庭でお弁当を食べれたらなあって思ってた」
新海くんの切実な声が、わたしの胸を揺さぶる。
「だったら、これからも火曜日と金曜日の昼休みは中庭で一緒にお弁当を食べようよ」
お弁当箱の横に手をついて、やや前のめりになりながらそう言うと、新海くんが哀しそうに笑って首を横に振った。



