だけど実際には、カノンとアキナはわたしの話を《ちゃんと聞いてくれる》どころか、新海くんに脅されているんじゃないかと疑っていて。
大勢多数に広まった悪い評判や偏見を良いほうにひっくり返すことの難しさを思い知らされただけだった。
「難しかったでしょ。わかってもらうの。特に西原さんは同じ小学校出身だから、ほかにもいろいろおれの家のウワサを聞いてきてるだろうし」
黙り込んでしまったわたしに、新海くんがふっとため息混じりに笑いかけてくる。
「前に、うちの母親が二年前に死んだって話したじゃん? 妹が生まれてしばらくしてから病気がわかって、数年間闘病してたんだよね」
口元にわずかに笑顔を張り付けた新海くんが、静かな声で話し始めた。
「お母さんが病気で入退院を繰り返してるとき、おれとまだ小さかった涼音を抱えて働く父さんは、周囲から割と好意的な目で見られてたんだ。奥さん大変なのにひとりで頑張ってるね、って。だけど、仕事と家事と病院との掛け持ちが父さんと小学生のおれとではすぐに難しくなっちゃって、うちから三駅のところにある職場に通ってた従姉のさーちゃんとか、わりと近場に住んでるさーちゃんのお母さんが手伝いに来てくれるようになったんだよね。そのあたりかな、好意的だった周囲の目が変わっていったの」



