初恋ランチタイム


 二階と三階を繋ぐ狭い踊り場を歩き抜けながら、祈るような気持ちで目を閉じる。

 お願い、いて……!

 ドキドキしながら顔を上げたそのとき、三階の非常扉の前に座る新海くんの姿が目に飛び込んできた。

「新海くん!」

 ウソ。会えた……!

「ここにいたんだね。わたし、中庭で待ってて……」

「そう思ったから、中庭には行かなかった。もう、一緒に食べるのはやめようって連絡しただろ」

 笑顔で話しかけるわたしの言葉を冷たく遮って、新海くんが膝の上に広げかけていたお弁当箱の蓋を閉める。

「急にラインで辞めようって言われても、理由もわからないし納得できないよ」

「理由なんて、考えなくてもわかってるよな」

「一緒にお昼ごはんを食べてたことが、カノン達にバレたから?」

「ほら、よくわかってるじゃん。お弁当食べるなら、ここ使って。おれが移動するから」

 新海くんが自嘲気味に笑って、静かに立ち上がる。

 目の笑っていない新海くんの笑顔は、わたしのことを拒絶しているみたいに見えた。