カノンとアキナの後ろをとぼとぼと歩いて教室に戻ると、まだ五時間目の本鈴はなっていないのに、教壇には既に数学の授業の先生が立っていた。

「お前ら、遅いぞー。早く座れ」
 
 先生にどやされて慌てて席に着くと、少し離れたところに座っている新海くんが珍しくこっちを見ていた。

 非常階段から戻ってくるなりカノン達に教室の外に連行されたから、もしかしたら気にしてくれているのかもしれない。

 大丈夫。

 声は出さずに口の動きでそれを伝えようとしたら、冷たい表情を浮かべた新海くんに、ふいっと顔をさらされた。

 もともと、わたしが新海くんに関わっていいのは昼休みの中庭にいるときだけ。

 そういう約束だから、教室で目が合わないのなんてあたりまえなのに、冷たく目をそらされて心臓がズキンと痛かった。