振り向くと、カノンに引っ張られて歩くわたしの少し後ろから困り顔のアキナがついてきていた。わたしと目が合うと、アキナが困ったように目をそらす。
カノンだけじゃなくアキナにも、わたしの話は《ちゃんと聞いてもらえない》のかもしれない。
悲しい気持ちになっていると、カノンがトイレを過ぎた先にある空き教室の前で足を止めた。
「ニコちゃん、さっきはどうして新海くんとふたりでいたの?」
低い声で問いかけてくるカノンの表情は険しい。
新海くんと中庭で会うようになった経緯を何からどこまで説明しようか考えていると、カノンがじれったそうに顔をしかめた。
「火曜日と金曜日にバド部の子達とお弁当食べてるって言うニコちゃんの話はウソだったんでしょ? いつから新海くんに呼び出されてたの?」
「違うよ。わたしが勝手に新海くんに会いに行ってただけで……」
「ウソ」
中庭でひとりで過ごしていた新海くんのスペースに勝手に入り込んでいったのは、わたしのほう。
それなのに、カノンはわたしの言葉を聞き入れようともしなかった。



