「うん。いいな、カノジョにお弁当作ってもらえるなんて。うちは、お母さんが寝坊しちゃって、寝起きでコンビニまで自転車で買いに行ったんだよ」
「そうなんだ。いいじゃん、コンビニおにぎり。おれもツナマヨ好き」
わたしの齧りかけのツナマヨおにぎりを見て、新海くんが人なつっこく笑う。
話すのは初めてだし、会話だってまだ少ししかしていないのに、親し気に笑いかけてくる新海くんになんだかドキドキしてしまった。
まなじりの上がった二重の目に、筋の通った鼻。
不良だと有名な新海くんには、目を合わせると殴られるなんていう物騒なウワサもあったりして、これまでちゃんと顔を見たことがなかったけど。
間近で見たら、新海くんは結構整った顔をしている。
「ツナマヨは、わたしも好きなんだけどね……」
新海くんからさりげなく顔をそらしてつぶやく。そんなわたしの横顔を、新海くんがじっと見てきた。
「好きだけど、今日はあんまりツナマヨの気分じゃなかった?」
新海くんに訊ねられて、ほんの一瞬言葉に詰まる。
ツナマヨの気分じゃなかったっていうか。これは、全くの予定外なのだ。



