「新海くん!」
漠然とした不安を感じで呼び止めると、既に非常階段を降り始めていた新海くんが振り返る。
「あの……、今日のこと、ほんとうにごめん……」
「だから、ニコちゃんが謝ることじゃないって言ったじゃん。どっちかっていうと、おれの問題だし」
「え?」
「いや、別に……」
哀しげに目を伏せた新海くんの額の上で、茶色の混ざった金髪が揺れる。
「じゃあ、またね。ニコちゃん」
手を振って階段を駆け降りていく新海くんの後ろ姿を、わたしは複雑な思いで見送った。
「またね」ってことは、わたし、金曜日の昼休みも中庭に行ってもいいんだよね……?
お弁当交換しよう、って約束だってしたんだし。
一生懸命に前向きに考えようとするけれど、別れ際の新海くんの表情を思い返すと、胸騒ぎしかしなかった。



