「早く食べないと、ほんとうに昼休み終わっちゃうね」
新海くんは少し素っ気ない声でそう言うと、無表情でそぼろごはんを食べ始めた。
そこから、わたし達の空気はあまりよくなかった。
お弁当を黙々と食べる新海くんは一度もわたしを見てくれなかったし、隣同士に座っているのに新海くんとの間には目に見えない透明で分厚い壁ができている感じで、話しかけづらかった。
完全に笑顔を消した新海くんの雰囲気は教室にいるときのようにピリついていて、少し怖い。
気まずくなってしまったわたし達のあいだを湿気を含んだ重たい風が抜けていった。
下を向いて、もはや味もよくわからないお弁当を食べていると、新海くんが先に完食した。
「ごちそうさま。これ、もういいよな」
自分のお弁当箱を片付けたあと、新海くんがわたしの分のおかずを入れていたタッパーに横から手を伸ばす。
「うん。ごちそうさま。ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、おれ、先に行くね」
新海くんが少しよそよそしい笑みを浮かべて立ち上がる。
どちらかが昼ごはんを食べ終わったら、流れ解散。それが週二日、わたし達が中庭で一緒に過ごすときのルールだ。
だけど、いつになくよそよそしい新海くんの態度がわたしを不安にさせる。
もしかして、新海くんとはもう話せなくなるんじゃ……。



