「あ、ちょっ……」
「いいじゃん。ニコちゃん、おれのおかず食べてるんだし」
新海くんが悪戯っぽく笑って、バクッととんかつを口に入れる。
友達同士でお弁当のおかず交換とか、ふざけて取り合いっこなんてことはしたことあるけど……。
その相手が新海くんとなると、目の前の展開に頭の回転が全くついていかなくて。心臓がバクバクとした。
「じゃあ、金曜日は約束な」
人なつっこい笑顔を向けてくる新海くんの金髪が、さらりと揺れる。
雨の降る曇り空の下で、新海くんのいるその場所だけがなんだかやけにまぶしく見えた。
どうして新海くんがわたしなんかとお弁当交換したいのか、全くわけがわからないし。全く自身もないけど。
新海くんの笑顔と「約束」という優しい言葉に流されるままに頷いてしまう。そのとき。



