「でも、全部冷凍のおかずだよ? 交換するなら、一品くらいは自分で手作りしたお弁当じゃないと……」
新海くんのお弁当に釣り合わない。いや、一品や二品手作りしたって絶対に釣り合うことなんてないんだけど……。
ミニトートを抱きしめて、目を伏せる。
「そ、それより……、早く食べよう。昼休み終わっちゃう」
いそいそと持ってきたお弁当を広げて食べようとしていると、「じゃあ、金曜日」と新海くんが言った。
「金曜日?」
「うん、金曜日におれとニコちゃんの弁当交換しようよ。そのときに、またそぼろごはん作ってくるし」
何の冗談を言ってるんだと思って目を見開くと、新海くんがにこっと笑いかけてきた。
「え? 本気で言ってる?」
「うん、本気本気」
「でもわたし、卵焼きもまともに作れないよ?」
「別に卵焼きにしなくても、ゆで卵でもスクランブルエッグでもいいよ。おかずも冷凍のやつで大丈夫だし。おれ、コレとか好き」
わたしのお弁当箱の中身を覗き込んだ新海くんが、チンしただけのひと口とんかつをサッと箸でさらっていく。



