「いただきます」

 誰に言うでもなくつぶやいてから、牛カルビ焼き肉のおにぎりを膝にのせ、ツナマヨおにぎりのビニールを剥く。

 パッケージに書かれた手順通りにおにぎりの海苔を巻いてパクッとかじりつくと、わたしの隣で新海くんがきんぴらごぼうを口に入れた。

 新海くんの膝の上に置かれた二段式のお弁当箱には、下段にふりかけのかかった白ごはんが、上段におかずが詰められている。

 卵焼き、きんぴらごぼう、ハンバーグ、ミニトマトに冷凍食品のミニグラタン。

 きれいに詰められた新海くんのお弁当のおかずは、品数が多くて美味しそうだ。

 新海くんの家は、お母さんがいないとカノンから聞いたけど。このお弁当は誰が作ったのだろう。

 料理上手なお父さん? 

 あ、カノジョの手作り弁当って可能性もある。

 いろいろ想像しながら新海くんのお弁当を横目で盗み見ていると、彼が「なに?」と不思議そうな顔でわたしを見てきた。


「ううん、別に。お弁当、おいしそうだなーって思って。新海くんのカノジョ、料理上手なんだね」

「カノジョ?」

 わたしの言葉に、新海くんがますます不思議そうな顔をする。