校舎の外に出ると、雨がぽつぽつと降っていた。

 朝に比べれば随分と雨脚が弱まっているが、午前中から降った雨で地面はしっとりと濡れている。

 これだけ濡れていたら、中庭の花壇には座れないだろうな。

 新海くんが「雨だったら校舎の非常階段にいる」と言っていたのを思い出したわたしは、初めから中庭に面した校舎の非常階段を目指した。

 横殴りの雨で濡れている階段をタンタンッと登っていくと、三階の非常扉の前に座っていた新海くんが顔をあげる。

「ああ、ニコちゃん」

 目が合った瞬間、新海くんがふわっと優しく笑いかけてられて、胸がどくんと鳴った。

「やっぱり雨だったね」

 新海くんのところまで残り五段をトントンッと登ると、「あーね」と、彼が隣にわたしの分のスペースを開けてくれる。

「おじゃまします」

「いらっしゃい」

 横から入ってくる雨に濡れないようにしようと思うと、非常階段は中庭よりも少し狭い。

 自然と近くなる新海くんとの距離に、わたしはいつもよりもドキドキしていた。