「カノンが言ってる話って、全部ただのウワサだよね? 高校生とケンカしてたって話だって、カノンがその現場を見たわけじゃないんでしょ?」
思わずそう言うと、カノンが少し驚いたように目を見開いた。
「そうだけど……、ママが友達から聞いてきたウワサで……」
わたしが強い口調で反論してくるとは思っていなかったらしい。カノンの言葉は、少し歯切れが悪かった。
「カノンが直接見たわけじゃないのに。全部ウワサなのに。なんで、ウワサだけで勝手に判断して新海くんを悪く言うの?」
新海くんを庇うような発言をするわたしを、カノンが驚きの目で見てくる。
「なんで、ニコちゃんが新海くんのことでそんなムキになるの?」
「別に、なってないよ」
「ちょっと、どうしたの? ふたりとも。急にケンカ始めないでよ」
アキナがおろおろとした顔で、わたしとカノンの言い合いを止めに入る。
「別にケンカじゃないよ。わたしはただ……」
根拠のないウワサで、新海くんが悪く言われるのは嫌だ。
そう言いかけて、わたしは途中で言葉を飲み込んだ。
声を張り上げるわけではなく、静かに言い合いを始めたわたしとカノンに、周りのクラスメートたちが好奇なまなざしを向けていたから。



