「なんでニコちゃんが新海くんのことよく見てるの?」

「知らない。わたしじゃなくて、ニコちゃん本人に聞いてよ」

 アキナに訊かれたカノンが、ツンとそっぽ向く。アキナは急に機嫌の悪くなったカノンに肩をすくめると、わたしに困ったような視線を向けた。

 アキナに困った顔で見つめられて、わたしも困る。

「ニコちゃんが新海くんのことを気にしてる理由は聞かないでおくけど……、あんまり関わらないほうがいいよ」

 しばらく微妙な沈黙が続いたあと、カノンがわたしに忠告してきた。

「前にも言ったでしょ。高校生とケンカしたとか、新海くんっていろいろよくないウワサがあるって」

 新海くんと中庭で話すようになる前のわたしは、金色の頭や人を寄せ付けない雰囲気で彼のことを怖いと思っていて、カノンの話を丸ごと全部鵜呑みにしてた。

 でも、今のわたしは、新海くんがケンカしたりするような人だとは思えない。そういうウワサがたってたとしても、きっと何か理由があったはず。

 入学式に金髪で来たことに理由があったみたいに。