「そ、そう? お腹痛がスッキリしたから、気分はいいかも」
わたしはどっちかというと感情が表に出やすいタイプだし、カノンは結構人の心の動きに敏感なタイプだ。
ハハッと笑って言ってみたけど、うまくごまかせている自信はない。
笑顔の裏で冷や汗を掻いていると、アキナがわたしを見上げてわざとらしく顔をしかめる。
「ちょっとニコちゃん。スッキリしたって、やめてよ〜。わたし達まだ食事中」
カノンと違ってアキナは、わたしが本当にトイレに行ってたと信じてくれているようで。わたしの「お腹スッキリ」発言に苦笑いで突っ込んでくる。
「あはは、ごめんごめん」
アキナのおかげでなんとなく場が和み、カノンもそれ以上、わたしの行き先を深く追求してこなかった。
昼ごはんを食べたあとにカノンとアキナと三人でおしゃべりしていると、五時間目の授業が始まるギリギリに新海くんが教室に戻ってくる。
その瞬間、クラスメート達がみんな緊張気味に息を呑み込み、教室の空気がピリつく。
新海くんは、それに気付いていて敢えて気付かないフリをしているのか。
自分の席だけを真っ直ぐに見据えて、無表情で歩いていく。
そんな新海くんの横顔を無意識に見つめていると、カノンがわたしの机を指でトントンッと叩いた。



