◇◇◇
「ニコちゃん、遅ーい」
新海くんと別れて教室に戻ると、カノンとアキナが不貞腐れた顔で抗議してきた。
「なかなか帰ってこないから、もうほとんど食べ終わっちゃったよ」
アキナに言われて見ると、ふたりのお弁当箱の中身は既に半分くらいなくなっている。
「ごめん、ごめん」
ヘラヘラと笑いながら席に座って、お昼ごはんを机に出すと、カノンがなんだかいぶかしむようにわたしの顔をじっと見てきた。
「ニコちゃん、ほんとうにトイレに行ってたんだよね?」
探るようなカノンの聞き方に、少しドキッとした。
「え、うん……。長かった?」
ヘラッと笑ってみせたけど、わたしを見つめるカノンのアーモンド型の瞳は冷たい。
「長かったっていうか。トイレから戻ってきただけにしては、ニコちゃん機嫌がよさそうだから」
カノンの言葉に、さらにドキッとする。
中庭で新海くんに会っていたことまではバレていないと思うけど、わたしが隠し事をしていることに勘付いているのかもしれない。



