初恋ランチタイム


「そっか。じゃあ、なおさらありがとう」

「ううん、いいの。わたしがどうしても今日お礼がしたかっただけだから。じゃあ、行くね」

 今度こそ手を振って立ち去ろうとしたら、新海くんが少し目を細めて、優しいまなざしをじっとわたしに向けてきた。

 わたしのことを引き止めるようなまなざしに、心臓がどくんと鳴る。

「新海くん……?」

「ううん、別に。そういえば明日は天気予報で雨降るって言ってたから、昼休みに降ってこなければいいなあってふと思って」

 明日の予報は雨なんだ……。

 もし昼休みに雨が降ったら、明日は新海くんと一緒にお昼を食べられないのかな。それは嫌だな。

 雲のかかった空に視線を向ける。

「昼休みだけでも晴れたらいいね」

 ひとりごとみたいにつぶやくと、新海くんが「そうだね」と返してくる。

「もし雨だったら、そこの校舎の非常階段にいるから」

 新海くんがそう言って、中庭に面した校舎を指差す。

「うん」

 新海くんの言葉に頷くわたしの胸が弾んだ。

 それって、明日の昼休みが雨でも新海くんと一緒に過ごせるってことだよね。

 それが嬉しくて、心臓をドキドキ鳴らしながら、何度も小さく頷いた。