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「よかったら、座る?」

 わたしが転がっていったツナマヨを拾いあげると、新海くんが自分の隣を指差した。

「いいの?」

「だって、それ、ここで食べようと思ってたんだろ。おれが移動するから、ニコちゃんはここ使って」

 新海くんがそう言って、膝の上に置いていたお弁当箱に蓋をする。そうして花壇から立ち上がろうとするから、少し焦った。

 できれば中庭でお昼を済ませたいけど、先にいた新海くんを追い出したいわけじゃない。

 それに、わたしはもう、新海くんが怖い人ではないってことがちゃんとわかっている。

「移動なんかしなくていいよ。新海くんもここで食べて。わたしは隣のスペースを少し使わせてもらえたら大丈夫だから」

 お弁当を持って立ち去ろうとする新海くんを止めると、彼が驚いたように目を見開く。

 けれどすぐに優しい目をしてふっと笑うと、浮かしかけた腰をもう一度花壇の赤レンガに落ち着けた。

「ありがとう」

「いえ、こちらこそ」

 新海くんの柔らかな笑顔にドキッとしたわたしは、視線をそらしてうつむくと、赤レンガふたつ分くらいの距離を空けて彼の隣に腰かけた。