Cherry Blossoms〜感情より大切なもの〜

「いえ、四月一日先生のためならいつでも時間を作ります」

段差などで転ばないように手を重ねたまま、桜士は車まで案内し、一花を助手席に乗せる。そして、車はパーティー会場となるホールへ向かった。ホールは、ここから約三十分ほどかかる場所にある。

車の中では、一花が桜士の小学生の頃はどんな子どもだったのかを質問し、桜士は小学生の頃を思い出しながら答えていく。当時、クラスメートたちと一緒にハマっていたものや、好きだった教科、好きだった給食のメニューや、学校にいた先生のこと、学校行事のことなど、一花が隣にいるせいか、話は尽きない。

「すみません、僕ばかり話してしまって」

「いえ、聞いているとすごく楽しいです。私はずっとアメリカにいましたから、運動会や文化祭のお話を聞くとわくわくします」

桜士が謝ると、一花はフニャリと笑う。海外の学校には、日本の学校で当たり前にある運動会や文化祭などがないことも珍しくない。特に一花は渡米してすぐに医大に入ったため、学校行事に関する思い出はほとんどないだろう。