Cherry Blossoms〜感情より大切なもの〜

胸の高鳴り、そして緊張を覚えながら桜士は玄関のチャイムを鳴らす。パタパタと走る音がした数秒後、一花が顔を見せた。

「本田先生、お迎えありがとうございます!」

そう笑った一花に、桜士は見惚れてしまう。今回の同窓会はドレスコードが必要だと招待状に書かれていたため、一花は普段着ではなくパーティー用のドレスを着ていた。桜士が初めて見る格好である。

一花が着ているオフショルダーのドレスは、胸元には赤い花の刺繍が施され、薄いピンクのふんわりと広がったスカート部分にも所々に花が散りばめられている。髪は後ろで複雑な編み込みをされ、つけられた赤いリボンが風に揺れた。

「ドレス、とてもお似合いですね」

ハニートラップをする際は、もっと歯の浮くような台詞を並べることができる。だが、美しく着飾った一花を前に桜士が言えたのは、なったその一言だった。だが、一花はその一言で頰を赤く染めていく。

「あ、ありがとうございます!本田先生もとても素敵です!今日はよろしくお願いします!」