数分後、一花はゆっくりと顔を上げる。そこにあったのは怯えた顔でも、様子を窺うような顔でもなかった。凛とした眼差しが全員を捉え、リップグラスが塗られた唇が言葉を発する。

「私、パーティーに参加します」

その言葉には、一切の迷いがなかった。



数日後、桜士は胸を高鳴らせながら車を走らせる。桜士は上等なスーツに身を包み、一花を迎えに行くために車で彼女の家まで向かっている。今日は、一花の同窓会の日のためだ。

「ここか……」

事前に一花に教えてもらった住所を頼りに住宅街へと走る。そして、一軒の前で車を止めた。木造の一軒家である。どこか温かい雰囲気を感じるその家を見て、桜士は目を細める。

「四月一日先生が住んでいるのか……」

彼女は、この家でいったいどのように過ごしているのだろうか。家族のために料理や洗濯、掃除などをこなし、家の中でもあの優しい笑顔を見せているのだろう。ふと、桜士は想像してしまう。