「リティク、私にもオススメ教えてほしいわ!」

ウクライナ人の内科医、ナタリア・ソーニャがそう言うと、一花が「私にも教えて!」とリティクに声をかける。一花の顔には、笑顔がすっかり戻っていた。

「一花が笑えるようになってよかった」

ヨハンの呟いた言葉に、桜士は「ええ、そうですね」と同意する。今日みんなでこうして遊びに出かけているのは、一花が笑えるようになったお祝いのようなものだ。

クラウディオから一週間ほど前、「eagleのみんなで映画行くんだけど、一緒に行かない?」と誘われ、一花と映画が観れるということに桜士は胸を高鳴らせ、OKをしたのだ。

イオンモール内にある映画館で桜士たちが観たのは、最近公開されたばかりのファンタジー映画だった。世界的に有名なファンタジー小説を実写化したもので、その小説は一花が好きなものらしい。一花の好きなものを一つ知ることができ、桜士は嬉しくなった。

(ファンタジーは俺も初めてだったが、よかった)