さて、このコーヒーに使われている豆はどんな種類なのかと脳が推理しようとした刹那、桜士はあることに気付いた。カフェに入ってしばらくはずっとこの耳に入っていた雨音が聞こえていない。

桜士が窓の方を見ると、雨が止んでいた。青空が見えている。天気予報では今日は一日中雨だと言っていたはずなので、不思議な気持ちになってしまう。

「四月一日先生、あれを見てください」

桜士は空に綺麗なアーチを描いている虹を見つけ、指を指す。一花も虹にすぐに気が付き、「綺麗ですね!」と微笑んだ。

それは、天国へと旅立った藍からの贈り物なのでは、そんな非現実的なことを桜士は思いながら、一花とコーヒーを楽しんだ。