「まぁわかるけどね。紫呉って見てくれだけはいいもんなぁ〜」



「はい!…って、中身もカッコイイですよ?」



勢いよく頷いちゃったけど、すぐに否定した。



紫呉さんが優しいのは、もう知っちゃったもん。



斗真さんは私の意見に「やれやれ」と呆れたように首を横に振った。



コソッと耳打ちするように顔を近づけて、手を口元に添える。



「あれは猫かぶるのが上手いだけ。翠ちゃんも、もしかしたら騙されてるかもよ?」



「斗真、聞こえてますよ」



そんな斗真さんを振り返りながらギロリと睨む紫呉さんは、お盆に3つのティーカップを乗せていた。



紅茶のいい香りが部屋いっぱいに広がる。



わぁ…すごい、ティーバッグとは思えないなぁ。



くんくん…と嗅ぐと、喫茶店の匂いがする気がしてきた。