周りの建物は古びていて、夜になったらお化けが出てきそう。
いや、そんな遅い時間までいることはないと思うし…大丈夫だろうけど…。
街の中心街から少し離れただけなのに、ここだけ空気が異様に感じる。
「…怖いですか?」
私が怖がっていることに気がついたらしく、こちらをじっと見つめてそう聞いてきた紫呉さん。
うっ…これだけで怖いなんて言ったら、弱虫だって思われちゃうかも…。
それに、こんなことで紫呉さんに心配かけたらだめだよね。
「大丈夫です」って言わなきゃ…!
今にもここから逃げ出したいのをぐっと我慢して、笑顔を作った。
「こ、これくらい平気ですよ。私、そんな子供じゃありませ…」
「そんなに強ばった顔で言われても、全然説得力がありませんね」
頬に添えられた手が、私に温度をくれる。



