それは、帰る時もずっと気にしてたこと。



「あの…ご家族の方に挨拶とかしてなかったなぁって思ったんですけど…大丈夫でしたか?」



紫呉さんの、家族の話だ。



斗真さんがいるのは知っているけど、二階から玄関に行くまで人の気配を感じなかった。



お邪魔したからには挨拶しないといけないと思ったし、その…ゆくゆくは…というか…。



…ともかく、まだ知らない紫呉さんの家族構成とかを聞きたいと思ったのだ。



「……」



でも、すぐに返ってくると思っていた返事がなかなか聞こえてこない。



ど、どうしたんだろう……?



「……紫呉、さん?」



もしかして、まずいこと聞いちゃった…?



こんなことは滅多にないから、とても不安になってくる。



だけど、それも一瞬だった。



「あ…すみません、少しぼうっとしてました。家族の話ですか?両親は二人とも夜遅いので心配しなくても大丈夫ですよ」