「ふ、くくっ…紫呉が怪我かぁ…安心しなよ、翠ちゃん。紫呉が相手に怪我を負わされたことなんて、今までで一回もないからさ」
「えっ…い、一回も…?」
まだ可笑しそうに笑っている斗真さんの言葉は、あまりにも信じられなくて聞き返す。
だって、そんなことある…?
紫呉さんが強いっていうのは前にも聞いた覚えがあるけれど…。
「物を投げられる…とか」
「ないねぇ」
「な、殴られたり…とか」
「まずそんな距離まで近づけさせないっしょ」
「蹴られたり…」
「そういうのを予測して先回り、からの倍返しのパターンだな」
……………。
「紫呉さんって、一体何者で……?」
「んー…ちょっと強い男子高校生?」
い、いやいやいや……!!
“ちょっと”どころじゃないよ…!!?
最早そんな人物、漫画の世界の主人公しかいないんじゃ…と思うほどに、紫呉さんが強すぎる。
でも、斗真さんの言い方からして本当のことなのだろう。



