「さ、戻りますよ。親御さんが心配してしまいます」



「は、はい…!」



紫呉さんに手を引かれて、たった100メートルをのんびりと歩く。



自然に繋がれた手が恥ずかしくて…嬉しくて。



すぐに家に着いてしまったけれど、紫呉さんは最後まで手を離さずにいてくれた。



「…じゃあ、また明日。今日は疲れたでしょうから、早く寝てください。そしてまた明日、一緒に帰りましょう」



「…はい」



「おやすみなさい」



名残惜しそうに離れた指先。



紫呉さんは振り返らずバイクにまたがって、走り去っていった。



…はぁ、今日は色んなことがあったなぁ。



家の中に入ってもボーッとするばかりで、紫呉さんが最後に言った言葉をまるで聞いていなかった。