男が私が置いていた、びしょ濡れのノートを砂浜から拾い上げた。そしてパラパラと海水に濡れたノートをつまみながら捲っていく。

「ふーん、恋愛小説?」

「ちょっと……返してよっ」

「何?要らないもんなんだろ?だから海に捨てようとしてたんじゃねぇの?」

私は濡れたワンピースの裾を握りしめた。

「……そうよ。私の心からでた要らないモノなのっ!私と一緒よっ、誰からも必要とされてない!」

「要らないモノね……じゃあ燃やしていい?」

「え?」

男はズボンのポケットからライターを取り出しノートに近づける。

嘘は吐いてない。
要らないモノだ。

でも海に捨てても最悪取りに行けるが、燃やしてしまえば跡形もなくなってしまう。

「じゃあ燃やすから」

「やめてっ!」

私は思わず男からノートを取り上げた。男がライターを振りながら、クククッと笑った。

「これオモチャだし、大体びしゃびしゃなのに燃えるわけねーじゃん。てゆうかアンタ小説家なんだ」

「……違うっ、そんなんじゃないっ!ただの物書きだからっ」