見上げれば、白銀の小さな星達が追いかけっこをするように夜空のキャンバスいっぱいに光線を描いていく。

「わぁ……綺麗……」

その光の線は弧を描きながら無数に水平線の彼方へと消えていく。

「俺達のいく方向と同じだな」 

蒼の髪が夜風に揺れて藍色の空に溶け込んでいくように見える。

「蒼は絶対行けるよ」

私は精一杯笑う。私は蒼と並んで水平線の向こうに行くことはできないから。でも蒼の夢が叶うことを心から願ってる。蒼の未来が蒼が納得できるモノであるよう、私は流星に強く願った。

「月瀬も行けるよ、月瀬は自分が思ってるよりずっと強いから」

「……そんなことないよ……弱いしすぐ泣くし……」

「他人の心に寄り添える強さがあるから泣くんだよ」

我慢していた涙はやっぱり転がった。 

「ま、確かに泣き虫だけどな」

蒼が意地悪く笑いながら、優しくそっと私の涙を指先で掬った。

「月瀬……空だけはどこにいても繋がってるから。俺も月瀬もどこかでいつも同じ空見てるから……だから一人で泣くなよ」

蒼が何故そんなことを言うのかもう分かっている。私と蒼が恋愛ごっこを始めて六日目だ。明日は互いにサヨナラを告げる日だから。

「蒼、泣きそうになったら、私空見上げるね……だから心配しないで」

蒼からの返事はなかった。ただ、蒼は流星が全て流れて消えても暫く私を抱きしめてくれていた。