その物語のタイトルはいま君の掌の中に

「着いたぞ、結構寒いな。月瀬大丈夫?」

「うん、大丈夫。蒼は?」

「俺はへーき」

二人並んで砂浜に座れば、蒼が嬉しそうに唇の端を引き上げた。

「月瀬、今日雲ほとんどない。星日和(ほしびより)だな」

「星日和?」

「そ。星日和の日はこうやって夜空にほとんど遮蔽物がないんだ。だから星も月も見放題、今日は俺たちしかしないから天然プラネタリウム貸切だな」

「うんっ」

蒼が私の首元のマフラーを巻き直した。

「えと……」

「本当に寒くない?月瀬に風邪ひかれたら俺めちゃくちゃ困るし」

「大丈夫だよ、私滅多に風邪引かないから」

「俺もだし」

蒼が少しだけ咳き込みながら、ニカッと笑ったのが可笑しかった。

「まだ流星群の時間に少し早いからさ、待ち時間に月瀬にプレゼント持ってきた」

「え?プレゼント?」

蒼がギターを抱えると左手でコードを押さえる。 

「あ!Emコード!」

「正解っ」

「蒼、もしかしてギター弾いてくれるの?」

この間は私に教えるだけで、蒼は恥ずかしがってギターを弾いてくれなかった。