その物語のタイトルはいま君の掌の中に

──6day

こんなにも夜になるのを待ち焦がれた日があっただろうか。

「今日は満月なんだ……」

自室の窓から見上げれば、藍色の夜空には綺麗な真円が浮かんで私を優しく照らしてくれる。

「……蒼みたい」

私はずっと夜が嫌いだった。誰にも見つけてもらえず、ひとりぼっちで泣く夜は酷く孤独で生きている意味さえ見失いそうで、いつも涙ごと闇に飲み込まれてしまいそうで怖かった。そんな暗闇から私を蒼は見つけてくれた。ほんの少しだけど、自分のことが好きになれたから。

待ち合わせ一時間前になるのを確認すると私はダイニングテーブルに父宛のメモを残した。メモとはいえ父に手紙を書くのは初めてだ。

『蒼と星を見に行ってきます。心配しないで必ず帰るから。  月瀬』

そう短く書いて私は家を出た。