その物語のタイトルはいま君の掌の中に


「ひっく……ぐす……蒼……」

──プルルルップルルルッ

私は鳴り出したスマホの液晶を見ると、落っことしそうになりながら慌ててスワイプした。

「……もしもし……」

自分の声が震える。

「ケホッ……月瀬?……」

聞こえてきた蒼の声は少し掠れている。

「蒼っ……大丈夫?あの、私……」

「大丈夫。ちょい熱出てさ、寝てたからLINE気づかなくてごめんな。月瀬が俺から……ケホッ……連絡なくて心配してると思って電話した」

「うん……蒼まだ熱あるの?しんどそう……」

「ケホッ……熱は下がってさ、葛根湯飲んだし明日には全快予定……ケホッ……」

蒼はいつものように軽口を叩いているが、明らかに体調が悪そうで心配になる。

「蒼……ごめんなさい……私のせいで……お父さんに殴られたり、私がギター教えてって言わなきゃ蒼が風邪ひくこともなかったはずだし……本当に」

「それ違う」

「え?」

蒼が咳払いを一つしてから唇を湿らせるのが分かった。