その物語のタイトルはいま君の掌の中に

──5day

泣いて泣いて、いつの間にか泣き疲れて眠って、また起きれば泣いてを繰り返しているうちにお昼はとうに過ぎている。

私はぐちゃぐちゃに濡れた枕の下からスマホを引っ張っりだした。目覚める度に蒼に謝りたくて送ったLINEは既読にならない。

「……怒ってるよね……あんなに傷つけて……」

父とは家に戻ってから一言も話さないまま、私はこうして自室に閉じこもってベッドに蹲っている。物音一つ聞こえてこない家から父は今日も仕事に向かったようだ。

「……蒼っ……」

どうして涙には限りがないんだろうか。哀しみや孤独にも際限がないのと同じで、いくら心の声に従って瞳から要らない水分を出しても、結局心は何ひとつ満たされない。

「……喉、渇いたな……」

昨晩から一滴も水分を取らずに泣き続けていたからだろう。瞼は腫れて角膜が渇いてギスギスしている。

──『蒼ごめんね』

蒼のLINEに同じ文言を送るのは5回目だ。やはり既読にはならない。私はカーテンの隙間から差し込んだオレンジ色の光に蒼の笑顔を思い浮かべながら、一階のダイニングへと階段を降りて行く。