その物語のタイトルはいま君の掌の中に

「蒼っ、お待たせっ」

「ぷっ、お待たせって俺が急かしたんじゃん」

そしてすぐに蒼の視線が私の頭からつま先まで一周した。

「えと……蒼?」

「昨日のワンピースも可愛かったけど、カジュアルなのも可愛い……月瀬に似合ってる」

蒼はよく何でもストレートに言葉にしてくれるが、流石の蒼も恥ずかしかったのかもしれない。左耳のピアスを揺らすと蒼がそっぽを向いた。

「あ、それ貰う」

「うん」

蒼は私が両手で抱えていたギターを受け取ると、ギターストラップを肩から下げて当たり前のように自転車の後ろを視線だけで合図した。

私はとくとく駆け足になる鼓動を蒼に気づかれないように、蒼の身体に両手をそっと回した。