その物語のタイトルはいま君の掌の中に

──4day

お昼に一人でラーメンを啜ると、私はクローゼットの前で首を捻る。

「昨日はワンピースだったけど、今日はギター教えてもらうし座るのに……ズボンの方がいいよね」

私は黒の細身のデニムにオーバーサイズの白いパーカーを羽織ると姿見の前で両手を広げた。

「あんまり可愛くないかな……」

ふと独り言を呟いてから、私は一人で真っ赤になった。洋服なんてあまり気にせず出かけていた私が蒼に可愛いと思って貰いたくて、姿見の前で悩む姿なんて全然想像もつかなかった。

蒼と出会ってから、私は気づかないうちに少しずつ私の心は蒼につくりかえられているのかも知れない。恋を知る為の恋愛ごっこはもう私にとってはごっこじゃないように思う。

「……ダメだよ、ごっこなんだから」

ふいにスマホが鳴る。見れば自室の時計はまだ待ち合わせ一時間前だ。

──『月瀬に会いたくて早く着きすぎた。出てこれる?』

「嘘でしょっ……」

私は慌てて蒼のギターを持つと玄関扉へ向かって階段を駆け降りた。