その物語のタイトルはいま君の掌の中に

「じゃあ次は私ね、うんと、誕生日は?」

蒼の切長の瞳が大きくなった。

「あ、誕生日……な」

青がふいに顔を逸らした。

「ごめん、えっと聞かれたくないことだったなら……」

「あー、違うって。その……」

「蒼?」

「俺の誕生日さ、明日なんだよね」

蒼が私を見ると困ったように肩をすくめた。

「え!蒼、明日が誕生日なの?!」

「うん。毎年家帰んないから明日もその……暇なんだけどさ……月瀬がなんとなく気を遣うかなって思って……そのなんだ、恋愛ごっこな訳だから普通の恋人同士と違ってプレゼントとかもいらないし、その……要は気にすんなって言いたいんだけど」 

「えと、でも聞いちゃったからには……」

「そうやって……月瀬困らせたくないから、言いにくかったんだけど」

私は夕陽が沈み切って、仄かな藍色を纏い始めた水平線を眺めた。

「じゃあ、蒼のお誕生日会しよ?プレゼントは間に合わないけど……行きたいとこない?私で良かったら……その一緒に行くし、お祝いさせてもらえたら……」 

暫く蒼は黙ったままだった。

そしてようやく坂道を登り切ると蒼が私の方をじっと見た。