その物語のタイトルはいま君の掌の中に

──2day

昨日と同じ午後から蒼に呼び出されたのは街にひとつだけある図書館だった。

(今日も……緊張するな)

ここには何度も本を読みながら小説を書きに来ていたのに、蒼と入り口で待ち合わせると思うだけでさっきから何度深呼吸しただろうか。

私はスマホでもう一度時間を確認してから図書館の自動ドアの前に立つ。自動ドアが開けばすぐに長身の青い髪が見えた。

「……あ、ごめんね」

今日は蒼よりも少し早めに到着しようと思い待ち合わせより10分前に来たが、また蒼の方が先だった。

「謝んなくていいって。昨日言ったじゃん、俺暇だからっ、てことで中はいろ」

蒼はいつもより小さな声で私の耳元に顔を寄せた。図書館だからだろう。それでも耳元から蒼の吐息と一緒に少し高めの甘い声が響いてくると顔が紅潮するのが分かった。

「ふっ……なんか月瀬にそうゆう顔されるとデートっぽいな」

「え?あの……」

「ま、デートか」

蒼が笑った。

そして図書館の二階に上がり、窓辺に面した一番奥の席を蒼が指差した。

「此処にしよっか」

「うん」

蒼が座ってから私も隣に腰掛けた。