「……しんどいね」
「まあな。でも親も子供選べないけど、子供も親選べない訳でさ、なんていうのかさ、ずっとあの家が嫌いでさ。息が詰まりそうなんだ」
「……蒼くんの話、ちょっとだけだけど分かるよ。うちも両親離婚してるから……私はお父さんに引き取られて。お母さん、よそに男作って出て行ったから……。それ以来お父さん、笑わなくなったし、仕事急がしいのもあるけどほとんど帰ってこない……私……お母さんにそっくりの顔してるから……」
父は、母が私達を捨てて出て行ってから笑わなくなり、私を見るたびに哀しそうな目をするようになった。父が私を見るたびに私達を捨てた母親を重ねていると思うと苦痛で、ほとんど会話はない。同居しているが、互いに透明人間状態だ。
「……そっか……泣くの我慢すんなよ」
「え?」
蒼がポケットから丸まった水色のハンカチを私にぽいと渡した。
「……昨日も月瀬泣いてたから……その、勝手な憶測だけど、色々抱えてうまく吐き出せないんだろうなって。俺は男だからさ、泣くとかもあんまないし家出れるから。でも女の子は……そういう訳にも行かないだろうし。溜め込んで涙でそのうち心が溺れないうちに……泣きたいとき泣けばいいから……」
すぐに目の前の蒼が滲んでぼやけていく。
蒼が私の頭をポンポンと撫でた。
「よく死んだ母さんがこうしてくれた……ポンポンしたらさ、哀しいことも少しだけ心から転がって楽になるってさ」
「……ひっく……ありが……と」
蒼の水色のハンカチからはお日様みたいな匂いがして、頭を撫でる掌が日差しみたいにあったかかった。
「まあな。でも親も子供選べないけど、子供も親選べない訳でさ、なんていうのかさ、ずっとあの家が嫌いでさ。息が詰まりそうなんだ」
「……蒼くんの話、ちょっとだけだけど分かるよ。うちも両親離婚してるから……私はお父さんに引き取られて。お母さん、よそに男作って出て行ったから……。それ以来お父さん、笑わなくなったし、仕事急がしいのもあるけどほとんど帰ってこない……私……お母さんにそっくりの顔してるから……」
父は、母が私達を捨てて出て行ってから笑わなくなり、私を見るたびに哀しそうな目をするようになった。父が私を見るたびに私達を捨てた母親を重ねていると思うと苦痛で、ほとんど会話はない。同居しているが、互いに透明人間状態だ。
「……そっか……泣くの我慢すんなよ」
「え?」
蒼がポケットから丸まった水色のハンカチを私にぽいと渡した。
「……昨日も月瀬泣いてたから……その、勝手な憶測だけど、色々抱えてうまく吐き出せないんだろうなって。俺は男だからさ、泣くとかもあんまないし家出れるから。でも女の子は……そういう訳にも行かないだろうし。溜め込んで涙でそのうち心が溺れないうちに……泣きたいとき泣けばいいから……」
すぐに目の前の蒼が滲んでぼやけていく。
蒼が私の頭をポンポンと撫でた。
「よく死んだ母さんがこうしてくれた……ポンポンしたらさ、哀しいことも少しだけ心から転がって楽になるってさ」
「……ひっく……ありが……と」
蒼の水色のハンカチからはお日様みたいな匂いがして、頭を撫でる掌が日差しみたいにあったかかった。



