「う……ん」

「なんか恥ずいよな。お互い様だけど」

そういえば昨日蒼は、今までも彼女がいたと話していたが、彼女がいたのに待ち合わせをしたことがないというのは何故なんだろう。

「あ、今でも付き合った彼女っていうかさ、彼女って呼んでいいのかわかんないけど、みんな年上だったから。駅で唄歌ってたら声かけられて、その(ひと)の家行って泊まらせてもらってまた暫くしたら別の女の人から声かけられたら、そっちいってを繰り返してたから……」

「……蒼くん、家は?」

蒼の表情が曇るのが分かった。

「あ……ごめん、私も家のこと言いたくないのに。なかったことにして」

「いや……七日間とは言えさ、俺ら恋人同士な訳だし……ちゃんとした彼女できたら……俺のことも知ってほしいっていうか聞いてほしいなって思ってたから」

「……じゃあ……聞かせてくれる?蒼くんのこと……」

蒼が一瞬空をみて唇を湿らせた。

「……俺の両親さ……俺が小さい頃離婚してんだよね」

「え……そう、なんだ」

「うん。でさ、俺母親に引き取られてたんだけど、病気で死んでさ、中3の時に父親に引き取られたんだけど、その時もう親父再婚してたから」

「……うん」

「で、歳離れた義理の弟が居るんだけどさ、また小学生だからさ、親父にもその人にも甘えたい盛りで、俺のことは慕ってくれてんだけど、なんかさ……俺が居なかったらこの家の家族はもっと幸せなんじゃねぇのかなって」

心が痛い。ぎゅっとなって苦しくなる。蒼が、義母のことをその人と呼ぶことも、自分がその家族の邪魔者だと考えて居ることも。