一体「何」が英美里の足を掴んでいるのか。その冷たい手の力は強く、英美里が足を動かしただけでは全く振り解けない。

ハッハッと英美里の呼吸が浅く、早くなっていく。ドクドクと心臓の鼓動が早くなり、体から生産された冷や汗が額に浮かび、頬を伝っていった。

見てはいけない、本能がそう警告している。だがそう思えば思うほど、体は心と反対の行動を取ってしまうものだ。

ゆっくりと足の方を見た英美里の目が、大きく見開かれる。最大の恐怖が今、彼女を襲っている。口からはさらに大きな悲鳴が上がり、冷たいその手を振り払おうと必死になる。

英美里の足を掴んでいたのは、一人の少女だった。歳は英美里とそう変わらないだろう。だが、その体は異様に痩せており、顔は病人とは比べ物にならないほど青白く、パサついた長い前髪の隙間からギョロリとした目が英美里を捉えていた。そして、カサついた唇が言葉を紡いでいく。

「私のミミちゃん、どこ?どこにやったの?ねえ、どこ?どこなの?どこ?どこにやったのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?」